【読書】ひとつめの世界 著:加瀬ナカレ【感想】


タイトル:ひとつめの世界

著者:加瀬ナカレ

備考:時折コラボ等でお世話になっているナカレさんの歌集



ナカレさんがヒトガタすかい名義だった頃に発行された歌集を永久保存したく、

普段読む用に追加注文させて頂きました。

表紙はシンプルながら、レタリング短歌という試みでデザインされた

挿絵文字がなんとも不思議な感じで魅力的です。

(どうやって作っていらっしゃるのか訊いてみたいという本心)


久々に目にした厭世的な歌は、やはり胸を抉るようで、

その痛みが癖になるよなあ、と月見里個人は思います。

(世を儚むというには言葉が鋭いので、好き嫌いが分かれる歌集だと思っています)




同調したり好きだなと思った五首の紹介と感じたこと



笑っても泣いても僕はチグハグで

心の隅を切り取ってみる

泣きたい時に笑って、笑っているのに泣きたくて。

心の隅を切り取ったら駄目だと解離性障害の月見里は思いました。


ミキサーに君とわたしをぶち込んで

スイッチ入れたいような土曜日

ぐちゃぐちゃに混ざりたい時ってありますよね。

誰かとヒトツになりたい時って。


役割を果たせなかった遺書が散る

うまく死ねない僕を許して

高齢者でもないのに終活もどきをし、形見を用意する癖のある

月見里には痛いほど響きます。


治さないほうが幸せだったのに

不思議の国のアリスの病気

アリス偏執狂にはたまらない一首。どうして夢だったのでしょう。


ひとりでは息ができない夜がある

悲しいほどにあなたが好きだ

息をしている自信がなくて、夜に煙草を吸う月見里です。

好きという気持ちはプラスの感情なのに、悲しくなってしまう矛盾。



度々世を儚む月見里には、心地よさを感じるほど鋭い言葉たち。

痛い痛いと思いながらも頁を捲る不思議。

まるで、音楽療法の同質の原理のようです。

痛みで癒されたい。そんな方におすすめしたい歌集です。